言葉で相手を傷つけてしまったときに考えること

 言霊には気をつけよう、そう思ったので書きます。特にその悪い側面についてです。
 

 日常生活の中でふとした拍子に相手を言葉で傷つけてしまうことがあるかと思います。「余計なことを言ってしまった」と思うときです。その言葉がどう働くことになるか、そういう時には考えてみていいと思います。
 

 短く書くとこういうことになるかと思います。
 体験は記憶を媒介としてその言葉と結びつき、その結びつきは記憶の中で保存されます。そしてその言葉を介して記憶が復元され、記憶の中で再体験を繰り返します。
 

 たとえば話し手が聞き手に対して「うちわ」と言ったとします。その聞き手は、頭の中に「うちわ」を思い浮かべるでしょう。その時に頭に思い浮かべる「うちわ」は、話してが思い浮かべているそれと一緒でしょうか。恐らく、自分が持っている「うちわ」を思い浮かべるでしょうから、違う物になるでしょう。人によってはライブに持って行く「うちわ」を想像するかも知れません。また人によっては、夏祭りであの子と一緒に花火を見に行った時にもっていた「うちわ」を想像するかもしれません。また人によっては、嫌な記憶が「うちわ」にあるのかも知れません。「うちわ」という言葉は誰が考えても「う」と「ち」と「わ」からできていますが、その言葉が与えるイメージはこのように、時と状況によって違う物になります。

 
 ここで考えないといけないことは、「うちわ」という言葉は実際に現物が目の前に無くても使えるということです。言葉は、その人ごとの記憶と結びついており、言葉が発せられることでその記憶が呼び起こされているということになると思います。逆に言うと、言葉の中にはその人の記憶が保存されているということができます。


 その力を、言霊と呼んでもよいでしょう。
 とすると、こういうことになります。
 

 言葉で相手を傷つけることは、直接傷つけることと同じくらい重大なことです。物理的な傷は時間が経てば癒える物もありますが、記憶が残っている限り、記憶の中で何度でも人は傷つくからです。そしてその記憶を呼び覚ますのが、言葉の悪い側面の力でしょう。
 でも、言うべきことは言わないといけないと考える方もいると思います。その人を含め、次のことを意識すると良いと思います。

1相手と自分で、言葉の捉え方は違う。
2言葉は記憶と結びつき、呼び覚ます力がある。
3言葉が相手に与える力には重々気をつけなければならない。

以上です。ありがとうございました。