歌謡曲にまつわる思い出(『梁塵秘抄』より)

おはようございます。今日は日本古典文学大系73番の『和漢朗詠集梁塵秘抄』から『梁塵秘抄』です。中世の今様(遊女や白拍子も歌った七五調の歌謡)です。

君が愛せし綾い笠 落ちにけり落ちにけり、加茂川に河中に、それを求むと尋ぬとせし程に、明けにけり明けにけり、さらさら清け(さやけ)の秋の月は

綾い笠はいぐさで編んだ笠だそうです。その笠が加茂川に落ちてしまって、それを拾おうとしていた間に、秋の夜が明けてしまったよ、というような歌です。この歌は何が言いたいのでしょうか。


川村湊訳の光文社古典新訳文庫には、「女性(遊女)のところに行けなかった男の言い訳であるとか、遊女が客を引き留める歌であるとか、あるいは、男同士の主従関係であるという説もある」とまとめられていますが、とにかくこの歌に対してはいろんな状況が考えられているみたいです。


でも、どんな状況でもいいのかもしれません。「明けにけり明けにけり、さやさやさやけの秋の月は」と口に出してみて楽しく感じるのなら、歌謡を楽しむ分にはそれでいいのかもしれません。


個人的には、丸い笠が川に落ちている状況なので、空に浮かんでいる秋の月も丸くあってほしいな、と思います。水には丸い月影が映り、笠を拾い上げようとしても見つからず、そのうちに秋の月も明けて薄れていき、月影も消えてしまう。君、本当に笠を落としたの?どうだったっけ。


明け方まで飲んで、加茂川を歩いて帰ったことが学生時代何度かありましたが、その時の加茂川の水が、一番さらさらして、清く見えたように思います。理屈は特にはありません。


脱線しましたが、人口に膾炙した歌謡曲には、その歌本来の文脈や解釈とは別に、いろんな個人的な思い出が出来るものだなあと、そう思いました、